The Grand Budapest Hotel
100分 ドイツ/イギリス



監督 ウェス・アンダーソン
出演 ビル・マーレイ エイドリアン・ブロディ エドワード・ノードン など



1932年、舞台はヨーロッパの東端にあるという架空の国、ズブロフカ共和国。
高級ホテルのグランド・ブダペスト・ホテルをカリスマコンシェルジュのグスタフ・Hは、常連客であったマダム・Dが殺害されたことで、遺産争いに巻き込まれてしまう。


この話は、4つの時代で構成されています。
女性が、作家の銅像の前で「グランド・ブダペスト・ホテル」を読み始める現代。
書斎で作家が語る、1985年
作家がグランド・ブダペスト・ホテルを訪れ、ゼロからホテルの話を聞く、1968年
そして、メインである遺産争いの話が、1932年

これは、1932年に起こった話を、1968年に聞いた作家が、1985年に書斎から語っている、という体で進みます。最初の女性が読んでいる本の作家が、書斎で語っている彼です。

わたしは最初、このことを理解していなかったので、あまり話が分からなかったんですね~。けれど、それから3回くらいレンタルして、テレビで放映されたのを観て、さらにそれを録画してまた観ているので、めちゃくちゃ中毒性があったことは確かだと思います!いい加減DVDを買おうと思います。




これは、2つの点で圧倒されましたね…

まずは、そのセンス溢れるデザインです。

全体的にかわいらしいピンクが基調とされたホテル
グスタフ・Hやベルボーイ・ゼロの衣装
メンドル(お菓子屋さん)のケーキや箱…

とにかくこだわられていて、画面のどのシーンを切り取っても絵になります。
映し方も徹底しているんだろうな~。っていうのが伝わってきます。
監督は絵コンテの段階からすでに映像をはっきりと捉えているそうですね。

そのあまりのデザインのかわいらしさゆえに、『LARME』というファッション雑誌で特集が組まれていたり、つい先日、名古屋のヒルトンホテルで行われるストロベリービュッフェでは、グランド・ブダペスト・ホテルがコラボしていたりしましたね。愛知在住なのでもちろん行きました。

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すっごい可愛かったし、スイーツももちろん美味しかったです!この作品がオシャレ界隈に与えた影響は大きい!


そこに、ウェス・アンダーソン監督のあの独特な、ほぼ真顔で行われる役者たちの演技と、淡々としたの進み方、絵本みたいな画面切り替えなどの演出が加わって、まるでおとぎ話でも見ている気分になります。
ここが、中毒性に繋がっているんだと思いますね。
半分くらい彼の作品は見たことがありますが、どれもすごくかわいい!
でも、わたしが群を抜いて好きなのが、グランド・ブダペスト・ホテル。
この作品で彼の美的なセンスの神髄を魅せられた気持ちになりましたね。
完全に好みの問題です!




次に、現実世界と仮想世界の融合。
この作品、これがうまいんです。
《Pourquoi a fiction?》(なぜフィクションか?)という本を読んだのですが、そこで書かれていたのが、「現実世界の要素と、フィクション要素の上手なバランスが、よいフィクション作品を作る」というものでした。すごくざっくりと意訳しましたけれど。おもしろい作品は、これがすごく巧妙にできていると思います。

私は事前情報を何も調べずに見たのですが、
ブダペストかぁ、ハンガリーなのね。
→ズブロフカ共和国!?そんな国あった!?
→ファシストが出てきた、大戦の話ね。
→プロイセン風邪?そんなのあった…?
と、死ぬほど混乱しました。

現実にあった名称を織り交ぜることで、この作品がフィクションであることは分かるのに、まるで当時のヨーロッパに、わたしが知らないだけでズブロフカ共和国が存在していたかのような錯覚を起こすのです。(結局、他の方のレビューを見て、かつてのオーストリア=ハンガリー帝国がモデルになっている、というのでわたしは納得がいきました!)


フィクション作品とは、現実にあるものと、フィクション要素を織り交ぜることで成り立っています。そして、おもしろいフィクション作品というのは、これがすごくうまいのです。確実にこれはフィクションの話であると、あくまで現実世界の話であると勘違いさせないていどに、現実世界の話を織り交ぜることで、さまざまなメタファーや解釈がうまれ、物語に深みを与え、観る人にさまざまな解釈をさせます。たしかにこれは、フィクションの作品であると分かる。でも一回観ただけではよく分からない。だからもう一度観たくなる。この曖昧さが、わたしみたいな謎の中毒症状を引き起こすのだと思います。




さて、ウェス・アンダーソン監督と言えば、来年の春に『犬の島』(原題:Isle of Dogs)という新作映画が全米で公開しますね!
舞台は日本。失踪した愛犬を探す少年と犬たちの、壮大な冒険を描くそうです。手法はストップモーションアニメ。『ファンタスティック Mr.FOX』みたいになるのかなぁ。日本での公開が楽しみです!